「土器製作研究の始まりー新井士郎の土器づくり」

 

 今では、加曽利貝塚土器づくり同好会のように土器づくりを楽しむ、あるいは研究している同好会のようなグループは各地にあるようだ。

そんな中で加曽利貝塚土器づくり同好会は老舗中の老舗だと言う。

 

それは、新井士郎氏の活動を抜きに語ることができない。

当時、縄文土器と言うのは貝塚などから破片を採取し、形状形式、縄文のつけ多々などから、歴史を検証する学術的研究の資料だったようだ。

新井氏はそんな中にあって、実際に土器づくりを実験的に行うことを通して、粘土の調整、成形の方法、乾燥、焼成の温度などだけでなく、土器を実際に使用することによって縄文期の生活などを掘り起こそうとした。

氏は、研究者ではなく画家だと言うから驚く。

その研究姿勢は本業の片手間に熱心に取り組んだと言うものでなく、人生の全てを傾注したということを聞いて、さらに驚いた。

 

現在、土器づくり同好会で調合された粘土を安価で手に入れ、作り、焼成して往時の縄文土器のレプリカを目指すが、技術や解釈の浅さからなかなか思い通りのものができない。

こんなとき、現代人の美的求心や完全なものを作る力量は明らかに退化しているように思ったりする。

 

短期のうちにそんなことを感じられたのは、失敗に失敗を重ねた苦労を介さない、軽薄なものかもしれない。

 

 

開催場所:加曽利貝塚博物館内企画展示室

「土器製作研究の始まりー新井士郎の土器づくり

 

期日:2017年1月29日まで

時間:9時から17時(入館は16時30分まで)

休館日:月曜日と祝日の翌日、年末年始(12月29日から1月3日)