直後に配布された資料には黒い画面に人形型のワイヤーフレームの画像があった。
航空機のコックピットでの操作をシミュレートしたものだとの説明があった。
初のコンピューターという言葉を聞き、どんなものかを理解した(いや理解していないが、人間ではないことは解った)瞬間だった。
いままでの製品の改良版でない製品ジャンルで大いなる可能性を秘めているが、何に使うものか、役立つものか。これだけで不思議な存在であった。
シミュレーションとコンピューターは非常に相性がいい。恐らく最初に見た画面ハードコピーは高価なミニコンなどの画だと思うが、いまや同じことはパソコンと3D CADで専任のオペレータがいなくても簡単にできる。コンピューターの進歩は目を見張るものがある。今後もますます進歩していくことだろう。
あのときから20年くらい経過して、設計業務で初めて機械系の2D CADを導入して使用した。それまで紙に鉛筆での設計検討、図面作成だった。書き損じや計画変更などの対応は非常に無駄な時間を要した。
このCADの導入で大きなメリットがあったのは、リソースの再活用や簡易的であってもシミュレーションが可能となったことだろう。しかし2Dということは現実社会の3Dを頭の中で2D変換しなければならない。
また、レイヤー機能があっても、部品間の関係が掴みづらい。年齢が重なって目が衰えるとこれらを理解しながらの設計は辛くなる。当時も3D CADはあったが、非常に高価で専任オペレータが必要となるくらいオペレーションは難しかった。
その後、Windowsプラットフォームの3D CADが開発され、安価で導入できるようになった。2Dの線画から3Dでは面が表示できるので、目の負担が減った。人間の衰えをフォローするように新しい技術が開発されるのは救われる思いがした。
このようにしてコンピューターの進歩に助けながら、何とか仕事をしてきたが、人間の欲、要望は尽きるところを知らない。今後もどんどん進歩していくだろう。
しかし、開発ツールはどんどん進化しこれを使うことで精度のよいものができる条件が整うが、それだけでヒット商品は生まれない。
いろんな情報がコンピューターに取り込まれ、必要な情報が瞬時に得られるようになってもそれでも完璧とはならない。
掘り下げていくと、やっぱり人間に行き着く。人間の思考や判断を上回るコンピューターが生まれるのはいつのことだろうか。それとも生まない方がいいのかな。