『里山資本主義』書評 [雑感]
何ごとも形[かたち]から入るのでは改革は起こりえない。
一時期、イノベーションを唱える日本企業も多く出てきたが、実態はどうだったのだろうか。
中には真に成果をひねり出した企業や自治体、組織もあるだろうが、我々一般人にもわかるような報道も少ないところを見るとお題目に終わっているのではないか。
一方で、IT企業に限定すると米企業の躍進は目を見張るものがある。そこは米流の、とらえ方、実践のマネージメントに何か差があるのではないか
こんなことを考えていると、農耕民族と狩猟民族の差? 農耕っていうのは毎年同じことを繰り返すところに成功があるということになると、(決してそんなことではないと思うが)
それでは国民性っていう安易な結論で閉めたい。あるいは単に壊したくないという意識が強いだけなのか。
[かたち]から強く印象を受けるから、ユニフォームばかりか身体の頭からつま先までもユニフォームとし捉える。
入れ墨は論外。不潔なひげはいけない。頭髪は黒く、清潔に整髪する。夏場はクールビズで。
そのシーズン以外ではネクタイ着用などなど。それからはずれた者は表向きは無関心を装うが裏では認めない。
こんな環境にどっぷり浸かって浮かびもしない、沈みもしないという生き方しか選択肢はないよという制限が暗黙の正義として空気になっている。
いやなら、この世界から脱落する。
こんなことでエネルギーを使っていては始まるものも始まらない。
また、一度知識として蓄えたものは、誰がなんといっても、変えない。
一度決まったことには価値があり、守り続ける価値もある。
こんなところからはお題目としてのイノベーションは出てくるが、真の技術革新としてのイノベーションは起きない。
先日、ラジオを聴くことなしに聴いていたら、常識を覆すような話に耳を疑った。
おそらく著者が出演され、本の内容について語られていたのだろう。
「里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く」
著者 : 藻谷浩介 ・ NHK広島取材班
ISBN 978-4-04-110512-2-C0233
角川書店
本書のカバーに記載のコピー
< 課題先進国を救うモデル。その最先端は”里山”にあった!!
▼地域の赤字は「エネルギー」と「モノ」の購入代金
▼原価ゼロ円からの経済再生、地域復活ができる
▼知られざる超優良国家、オーストリア
▼ロンドン、イタリアでも進む、木造高層建築
▼真の構造改革は「賃上げできるビジネスモデルの確立」だ
▼「社会が高齢化するから日本は衰える」は誤っている >
内容要約
・お金が必要ではなく、必要なのは水と食料と燃料。
・自給自足は現代では無理であっても、地域では実践できる可能性がある。
その地にある資源を活かすことができればいい。
・貿易赤字の最大要因はエネルギー資源の輸入。これに頼っている限り、国内雇用は生まない。
・里山には木材資源が豊富にある。これはエネルギー資源としても建築資材としても活かせる再生可能資源である。
・地域でこれを活かすことができれば、雇用を生み、利益を生み流出していくリソースを最小化できる。
・木材資源のエネルギー変換はかつての常識を覆すほど進化している。
・都会で働く人々は金銭的な条件はいいと言っても、決して幸福とは言えない。
・物、モノ、もの、場合によっては者までも金銭的価値を付けて経済社会を作ってきた。
でもカネで買えないものはないと言い切れる世の中を見直すと、価値があるが金銭で買えないモノが確かに存在している。
・オーストリアは日本の北海道くらいの国土で、目立った産業もないが、国民一人あたりのGDPでは日本より上位。それは森林資源の活用によるところが大。などなど。
感想
日本にいて、日本流スタンダードの情報の中にどっぷり浸かっている者にとって、まさに目からウロコの情報だった。
このように既存の常識や障害をひっくり返す(逆転の発想)ことで一定の成果を上げている人々がいることは思ってもいなかった。
小さい改革だけれども、基本理念がしっかりしているこの改革は大きな力と影響力があるに違いない。
単に既成の改善というレベルではなく、すべてをいったん否定し、何が正しいのかをフィルターなしに追求していったのだろうか。
これこそがイノベーションに通じるスピリットだ。
いま日本にはこれが必要だ。こんなことを強く思った次第だ。
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2014-05-06 09:30
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